交通事故などで他人の行為によりけがをしたときの治療費は、本来は加害者が負担するものです。ただし、届け出れば後期高齢者医療の給付で受診でき、示談をする前に広域連合へ連絡しておく必要があります。届出の根拠、提出先と期限、必要書類の名称、対象になる例・ならない例を、広域連合の公式ページに基づいて整理します。過失割合や賠償額の算定はこのページでは扱いません。
第三者行為とは・なぜ届出が必要か
兵庫県後期高齢者医療広域連合は、交通事故やけんかなど第三者(加害者)の行為でけがや病気をしたとき(第三者行為)の治療費は原則として加害者が負担(損害賠償)するが、すぐに損害賠償を受けられない場合などは後期高齢者医療制度を使って診療を受けられると案内しています。このとき治療費は後期高齢者医療で一時的に立て替えたことになり、後日、過失割合に応じて加害者に請求されます。医療機関を受診するときは、第三者の行為による傷病であることを必ず伝えるよう求められています(兵庫県)。
法令上の根拠は2つあります。高齢者の医療の確保に関する法律第58条第1項は、給付の原因が第三者の行為で生じた場合に広域連合が後期高齢者医療給付を行ったときは、その給付の価額の限度で、被保険者が第三者に対して持つ損害賠償の請求権を広域連合が取得すると定めています(療養の給付では、費用の額から窓口の一部負担金相当額を除いた額)。届出については、同法施行規則第46条が、被保険者は遅滞なく、届出に係る事実・第三者の氏名及び住所又は居所(不明なときはその旨)・被害の状況を記載した届書を広域連合に提出しなければならないと定めています。この条文が対象とするのは、療養の給付や入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費の支給に係る事由です。埼玉県後期高齢者医療広域連合も、この届出は法律で義務付けられていると案内しています。
示談の前に広域連合へ連絡する理由
同法第58条第2項は、給付を受けるべき人が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、広域連合はその価額の限度で給付を行う責めを免れると定めています。そのため、加害者から治療費を受け取ったり示談で済ませたりすると、広域連合が立て替えた医療費を加害者に請求できなくなる場合があります(埼玉県)。兵庫県は、話し合いで損害賠償金額などを決めるとその内容が優先され、代わりに支払った治療費を加害者に請求できなくなり、場合によっては被害者(被保険者)に請求することになりかねないと説明しています。東京都後期高齢者医療広域連合も、不利な示談をすると保険給付分の請求ができなくなる場合があるため、示談前に必ず広域連合へ連絡するよう案内しています。
届出の流れ・提出先・期限
提出先は、お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口です(東京都・埼玉県・兵庫県とも共通)。交通事故の場合は、警察にも届け出て、自動車安全運転センターが発行する交通事故証明書の交付を受けます(東京都・埼玉県)。
期限は広域連合によって案内が異なります。東京都は事故日から原則30日以内に必要書類を市区町村の窓口へ提出するよう求めています。埼玉県には日数の記載がなく、届書をすぐ提出できないときは、まず電話等で事故の状況を知らせ、後日できるだけ早く届書を出す、事故証明書は後日の提出でもよいとしています。施行規則の「遅滞なく」に沿って、お住まいの窓口で提出時期を確認してください。
手続きの後の流れは、東京都の案内では、後期高齢者医療の給付で受診した医療費(自己負担分を除いた保険給付分)を広域連合が一時的に立て替えて医療機関へ支払い、治療の終了または症状固定までの保険給付分を加害者側に請求する、というものです。窓口で支払う自己負担の割合は窓口負担割合判定ページで確認できます。
必要書類と届書の名称の違い
届書の名称と書類の組み合わせは、広域連合ごとに異なります。公式ページで確認できた範囲は次のとおりです。
- 東京都:「第三者行為による被害届(後期高齢者医療用)」のほか、事故発生状況報告書、念書、同意書、誓約書、人身事故証明書入手不能理由書、治癒報告書、第三者行為に関する損害保険確認票が様式として掲載されています。市区町村の担当者が事故の状況を聞いたうえで、必要な書類を案内するとされています。
- 埼玉県:「第三者の行為による被害届書」、事故発生状況報告書、念書、個人情報の取り扱いに関する同意書、誓約書、印鑑、事故証明書が挙げられています。物件事故扱いの場合は人身事故証明書入手不能理由書、相手のいない自損事故や業務上のけが・病気の場合は事故傷病届が必要です。
- 兵庫県:「第三者行為による傷病届」、事故発生状況報告書、同意書、誓約書、交通事故証明書(交通事故の場合のみ)、人身事故証明入手不能理由書(物件事故扱いの場合)が挙げられています。
東京都・埼玉県の公式ページでは「第三者行為による傷病届」を損害保険会社向けの様式として別に掲載しており、どの様式を誰に出すかは広域連合や状況によって変わります。同じ名称の書類でも、広域連合が用意する様式と損害保険会社向けの様式があるため、お住まいの窓口で案内される書類を確認してください。
対象になる例・ならない例
交通事故に限らず、東京都は「交通事故や犬に咬まれたなど第三者から受けた傷害や自損事故の場合でも」窓口への届出により給付を受けられると案内しています。埼玉県が届出が必要な例として挙げているのは、脇見運転等による自損事故車に同乗中のけが、自動車事故以外の自転車同士の事故、暴力行為によるけが、他人の犬に咬まれたこと、飲食店・購入食品・仕出し料理での食中毒、スキー場での他人との衝突、介護施設・病院内での事故です。兵庫県も、他人が運転する車・バス・タクシーに同乗中の事故や、自転車同士または自転車と歩行者の衝突事故を例に挙げています。
一方、勤務中や通勤途中の事故は労災保険の対象で、東京都は業務中の災害では原則として後期高齢者医療給付を受けられないと案内しています(労災保険の適用は事業所を所管する労働基準監督署へ確認)。埼玉県は、労災保険等が適用されるケースで後期高齢者医療を使ってしまった場合は、速やかに窓口へ届け出るよう求めています。兵庫県は、被保険者自身の不法行為(犯罪行為や故意の事故、飲酒運転等)による場合も、健康保険を使用できないケースとして挙げています。
届書の名称・必要書類・提出期限は広域連合と個別の事故の状況によって異なります。一般的な制度の説明であり、個別のケースで後期高齢者医療を使えるかどうか、過失割合や賠償額の算定は行っていません。正確な取り扱いは、お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口または広域連合にご確認ください。
被保険者証・資格確認書の扱いは通知書の読み方、ほかの手続きはよくある質問、けがで緊急に転院した場合の交通費は移送費もあわせてご覧ください。
出典: e-Gov法令検索「高齢者の医療の確保に関する法律」第58条・同法施行規則第46条、東京都後期高齢者医療広域連合「交通事故などにあったとき(第三者行為)」、埼玉県後期高齢者医療広域連合「交通事故など(第三者行為)にあったとき」、兵庫県後期高齢者医療広域連合「交通事故などにあった場合(第三者行為)」(一次資料・出典一覧参照)。