後期高齢者医療の「移送費」は、病院や診療所へ移送された費用が払い戻される給付です。ただし支給は「移動が著しく困難」「緊急その他やむを得なかった」などの要件を満たす場合に限られ、通院や退院時の移送は対象になりません。支給の要件、対象にならない例、申請に必要なもの、申請期限を整理します。個別のケースが対象になるかどうかの判断は行いません。
支給される3つの要件
高齢者の医療の確保に関する法律第83条第1項は、被保険者が療養の給付を受けるため病院又は診療所に移送されたときに、移送費を支給すると定めています。支給する場合の条件は施行規則第59条にあり、広域連合は、被保険者が次の3つのいずれにも該当すると認められる場合に移送費を支給します。
- 移送により、法に基づく適切な療養を受けたこと
- 移送の原因である疾病又は負傷により、移動をすることが著しく困難であったこと
- 緊急その他やむを得なかったこと
東京都後期高齢者医療広域連合は、これを「移動が困難な患者が医師の指示により一時的、緊急的な必要性があって移送された場合に、緊急その他やむを得なかったと広域連合が認めた場合に限り支給する」と案内しています。よくある質問では、例として、災害現場等から医療機関へ緊急に搬送された場合や、離島等からやむを得ずフェリーなどで搬送された場合が挙げられ、支給される場合は極めて限定されていると説明されています。「医師の指示により」にあたる例は、症状のためその医療機関では十分な診療ができず、医師の指示で緊急に転院した場合などですが、医師の指示があっても必ずしも認められるわけではないとされています。
対象にならない例
神奈川県後期高齢者医療広域連合は、緊急その他やむを得ない理由に該当しない場合や、移送の目的である療養が保険診療として適切でない場合は対象にならないとしたうえで、自己都合(自宅近くの病院への転院など)、検査目的の移送、退院時の移送、通院、通常のタクシーでの移送などは対象にならないと例示しています。東京都も、通院など一時的・緊急的とは認められない場合は対象外とし、救急車は無料なので対象にならないと案内しています。
支給額の決まり方
施行規則第58条は、移送費の額を、最も経済的な通常の経路及び方法により移送された場合の費用で算定した額とし、ただし現に移送に要した費用の額を超えることはできないと定めています。実際に払った額の全額が必ず戻るとは限りません(神奈川県は「全額または一部」が払い戻されると案内しています)。個別の支給額は広域連合が判断するため、このサイトでは試算しません。
申請に必要なもの・提出先
申請先は、お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口です(東京都・神奈川県の公式ページで確認できた提出先)。施行規則第60条は、申請書に医師又は歯科医師の意見書(移送を必要と認めた理由、移送経路・移送方法・移送年月日などを記載したもの)と、移送に要した費用の額を証する書類を添付するよう定めています。公式ページで確認できた主な必要書類は次のとおりです。
- 東京都:移送を必要とする意見書、領収書、保険証等、口座の確認ができるもの。本人確認書類とマイナンバーが確認できる書類の提示も必要とされています。
- 神奈川県:療養費支給申請書追記(移送費)、移送を必要とする医師の意見書、移送区間・距離等のわかる領収書、振込先が確認できるもの(公金受取口座を指定する場合は不要)など。申請書は市区町村の窓口にあるとされています。
- 埼玉県:後期高齢者医療移送費支給申請書、領収書(原本)、移送に係る医師の意見書、マイナ保険証又は資格確認書、口座番号・口座名義人の確認ができるもの。
申請書の名称や添付書類は広域連合によって異なります。移送の原因が交通事故などの第三者の行為による場合は、申請書にその事実と第三者の氏名・住所を記載することになっています(施行規則第60条)。届出そのものについては交通事故など第三者行為にあったときの届出をご覧ください。
申請期限(2年)
高齢者の医療の確保に関する法律第160条第1項は、後期高齢者医療給付を受ける権利は、行使することができる時から2年を経過したときは時効によって消滅すると定めています。神奈川県と埼玉県は、移送費について費用を支払った日の翌日から2年を過ぎると時効となり、申請できなくなると案内しています。領収書は捨てずに保管してください。
移送費が支給されるかどうかは、広域連合が個別に判断します。一般的な制度の説明であり、個別のケースが対象になるかどうかの判断は行っていません。申請書の名称・必要書類はお住まいの広域連合によって異なるため、お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口にご確認ください。
被保険者証・資格確認書の扱いは通知書の読み方、ほかの手続きはよくある質問もあわせてご覧ください。
出典: e-Gov法令検索「高齢者の医療の確保に関する法律」第83条・第160条・同法施行規則第58条〜第60条、東京都後期高齢者医療広域連合「移送費」、埼玉県後期高齢者医療広域連合「療養費の支給」、神奈川県後期高齢者医療広域連合「移送費」(一次資料・出典一覧参照)。