後期高齢者医療では、市町村民税の課税所得が145万円以上だと窓口負担は3割の「現役並み所得者」と判定されます。ただし、世帯の被保険者の収入が一定額(1人世帯は383万円、2人以上の世帯は合計520万円)を下回るときは、申請により1割または2割に引き下げられます。
この手続きが「基準収入額適用申請」です。仕組み、申請が不要になる場合、収入の数え方、適用日を整理します。個別のケースが対象になるかどうかの判断は行いません。
3割の基準と、例外になる条件
高齢者の医療の確保に関する法律施行令第7条第4項は、3割負担となる現役並み所得者の課税所得の基準を145万円と定めています。
同条第5項は、この基準を適用しない場合を定めており、その1つが、療養の給付を受ける人とその世帯の他の被保険者の収入の額が520万円(世帯に他の被保険者がいない人は383万円)に満たない場合です。
世帯に他の被保険者がいない人で、70歳以上75歳未満の医療保険加入者が同じ世帯にいる場合は、その人と世帯の加入者の収入の額が520万円に満たないときも適用されません。愛知県後期高齢者医療広域連合も、この条文を「基準収入額の適用」の審査基準として掲載しています。
収入の基準(世帯の被保険者数別)
東京都後期高齢者医療広域連合の案内による収入判定基準は次のとおりです(1月から12月までの収入額)。
- 世帯の被保険者が1人:収入が383万円未満。ただし、383万円以上でも、同じ世帯に他の医療保険制度に加入している70〜74歳の方がいる場合は、その方と被保険者の収入合計が520万円未満。
- 世帯の被保険者が2人以上:収入の合計が520万円未満。
引き下げ後が1割になるか2割になるかは、千葉県後期高齢者医療広域連合の案内によると、被保険者が1人の世帯では「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円未満なら1割、200万円以上なら2割、被保険者が2人以上の世帯では合計が320万円未満なら1割、320万円以上なら2割です。
ご自身の世帯の目安は窓口負担割合判定ページで確認できます。
世帯別の計算例(単身・2人世帯)
次の金額は仕組みを見るための仮の数字です。収入は、必要経費や公的年金控除を引く前の1月から12月までの金額で、基準は上の東京都・千葉県の案内によるものです。個別の判定は市区町村が行います。
例1:被保険者が1人の世帯(収入が基準より低い)
年金などの収入が年350万円で、同じ世帯に他の被保険者がいない場合です。収入は383万円未満なので、基準収入額適用の対象になります。引き下げ後の割合は、千葉県の案内では「年金収入+その他の合計所得金額」で決まり、200万円未満なら1割、200万円以上なら2割です。
この例の収入だけで200万円を超えるため、2割となる見込みです。
例2:被保険者が1人の世帯(収入が基準以上)
収入が年400万円の場合は、383万円以上なので対象になりません。3割のままです。ただし、同じ世帯に他の医療保険制度に加入している70〜74歳の方がいて、その方と被保険者の収入合計が520万円未満なら、対象になる場合があります。
例3:被保険者が2人の世帯(夫婦とも75歳以上)
2人の収入の合計が年480万円の場合です。520万円未満なので対象になります。引き下げ後は、合計が320万円未満なら1割、320万円以上なら2割で、この例は2割となる見込みです。合計が540万円なら520万円以上のため、対象になりません。
| 世帯 | 収入の目安 | 基準収入額適用 |
|---|---|---|
| 被保険者1人 | 350万円 | 対象(383万円未満) |
| 被保険者1人 | 400万円 | 対象外(383万円以上) |
| 被保険者2人 | 合計480万円 | 対象(520万円未満) |
| 被保険者2人 | 合計540万円 | 対象外(520万円以上) |
「未満」が基準なので、383万円ちょうど、520万円ちょうどは対象になりません。自分の世帯の3割判定そのものは窓口負担割合判定ページと負担割合の判定チェックリストで確認できます。
申請が不要になる場合
東京都・千葉県の案内では、原則として申請が必要ですが、お住まいの市区町村で収入が基準に該当することを確認できる場合は、申請は不要です。住民税を課税する市区町村と異なるなどの理由で確認できない場合は、申請が必要になります。
もう1つ、同条第5項には例外があります。前年(受診月が1〜7月の場合は前々年)の基礎控除後の総所得金額等の合算額が210万円以下なら、145万円の基準を適用しないという規定です。
東京都は、昭和20年1月2日以降生まれの被保険者と同じ世帯の被保険者の「保険料計算のもととなる所得金額」の合計が210万円以下となる場合は、申請不要で3割の対象外になると案内しています。
「収入」の数え方
ここでいう収入は、所得税法上の収入金額で、必要経費や公的年金控除などを差し引く前の金額です(所得金額ではありません)。
東京都は、土地・建物や上場株式等の譲渡損失を損益通算または繰越控除するために確定申告した場合も、売却時の収入は含まれるとしています(所得が0円やマイナスになる場合でも同じ)。ただし、上場株式等に係る配当所得等・譲渡所得について、申告不要を選択した場合は含まれません。
申請先と適用日
申請先は、お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口です。千葉県は、収入金額がわかる書類を用意して窓口で行うよう案内しています。認定されると、申請月の翌月1日から適用されます(東京都・千葉県とも共通)。
適用は申請月の翌月からのため、該当しそうなときは早めに窓口へ確認してください。
毎年8月の再判定
基準収入額適用が一度認定されても、それで固定されるわけではありません。窓口負担割合そのものが、被保険者の課税所得や世帯の収入状況をもとに、毎年8月1日を基準日として判定し直されます。
千葉県後期高齢者医療広域連合は、自己負担割合を市町村民税課税所得(課税標準額)や世帯の収入状況から判定すると案内しています。見直し日は毎年8月1日です。
江東区も、前年の所得が確定し、住民税が決定された後に、毎年8月1日付で見直すと案内しています。
基準収入額適用による1割・2割への引き下げも、この毎年の判定に含まれます。ある年に基準を満たして1割・2割になっても、翌年の8月には、その判定に用いる前年の収入額などで改めて確認されます。基準を超えれば3割に戻ることがあります。
逆に、前年は基準を超えていた方が翌年度に基準を下回れば、新たに適用される可能性もあります。
ただし、認定を継続する際に申請書を毎年あらためて提出する必要があるのか、市区町村が住民税等の情報をもとに毎年自動で確認するのかは、今回確認した公式ページに明記がなく未確認です。
8月頃に届く通知書(通知書の読み方)で自分の区分を確認したうえで、疑問があればお住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口にご確認ください。
よくある質問
- 収入の基準や申請の要否は、お住まいの市区町村・広域連合の運用によって異なる場合があります。
- 一般的な制度の説明であり、個別のケースで申請できるかどうか、負担割合が何割になるかの判断は行っていません。
- 正確な取り扱いは、お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口にご確認ください。
- e-Gov法令検索「高齢者の医療の確保に関する法律施行令」第7条
- 東京都後期高齢者医療広域連合「自己負担割合」
- 愛知県後期高齢者医療広域連合「審査基準 基準収入額の適用」
- 千葉県後期高齢者医療広域連合「医療費の自己負担割合について」
- 江東区「後期高齢者医療制度の医療費の負担割合」
- 一次資料・出典一覧参照。毎年の再判定に関する確認日は2026年9月23日です。