人工関節の置換手術やペースメーカーの植込み手術のように、保険診療で入院して手術を受けるときの医療費は、窓口で払う割合(1割・2割・3割)にかかわらず、1か月の自己負担が高額療養費の上限額で止まります。上限額は窓口負担割合ではなく、所得の区分で決まります。
ここでは、厚生労働省の「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」の表をもとに、令和8年8月から令和9年7月までの月の上限を整理します。手術そのものの費用は病院や術式で変わるため、個別の金額は示しません。
手術入院の自己負担が上限で止まる仕組み
高額療養費は、同じ月(1日から末日まで)に医療機関で払った保険診療の自己負担が上限額を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。人工関節やペースメーカーの手術でも、手術・入院料・検査・薬など保険が使われる医療の自己負担は、まとめて月の上限の計算に入ります。
- 上限額は、年齢と所得の区分で決まります。窓口負担が1割か2割かの違いでは上限が変わらず、1割・2割の方は同じ表です。
- 月の単位なので、入院が月をまたぐと、月ごとに別々に上限が計算されます。
- 直近12か月の間に高額療養費に該当した月が3か月以上あるときは、4か月目から「多数回該当」の低い上限になります。
1割・2割の方の月の上限
令和8年8月から令和9年7月までの、75歳以上で窓口負担が1割または2割の方の上限額です。入院を含む自己負担は「外来+入院(世帯ごと)」の欄が目安になります。
| 所得の区分 | 外来(個人ごと) | 外来+入院(世帯ごと) | 多数回該当 |
|---|---|---|---|
| 一般(課税所得145万円未満の方など) | 22,000円 | 61,500円 | 44,400円 |
| 住民税非課税(区分Ⅱ) | 11,000円 | 25,700円 | 24,600円 |
| 住民税非課税(所得が一定以下・区分Ⅰ) | 8,000円 | 15,700円 | 表に記載なし |
2割の方は、外来の窓口負担が増える分を抑える配慮措置が別にあります(2割負担の配慮措置)。この配慮措置は外来の話で、入院を含む月の上限は上の表のとおりです。区分の判定と、令和9年8月以降の見直しは窓口負担割合と高額療養費の区分の違いで確認できます。
3割(現役並み所得)の方の月の上限
課税所得が145万円以上の現役並み所得の方(窓口負担3割)は、医療費の総額が大きいほど上限も増える計算式です。令和8年8月から令和9年7月までの上限は次のとおりです。
| 区分(課税所得) | 月の上限(10割分の医療費は医療費の総額) | 多数回該当 |
|---|---|---|
| 現役並み所得Ⅲ(690万円以上) | 270,300円+(医療費-901,000円)×1% | 140,100円 |
| 現役並み所得Ⅱ(380万円以上) | 179,100円+(医療費-597,000円)×1% | 93,000円 |
| 現役並み所得Ⅰ(145万円以上) | 85,800円+(医療費-286,000円)×1% | 44,400円 |
自分が3割かどうかは窓口負担割合の判定ページで確認できます。
仮の数字で見る計算の流れ
次は計算の流れを見るための仮の数字で、実際の手術の費用を示すものではありません。1か月の保険診療の医療費の総額(10割)を100万円と仮定します。
- 1割・2割の一般の方:窓口の負担は1割なら10万円、2割なら20万円ですが、月の上限は61,500円なので、自己負担は61,500円で止まります。
- 3割の現役並み所得Ⅰの方:窓口の負担は30万円ですが、上限は85,800円+(1,000,000円-286,000円)×1%=92,940円で、自己負担は92,940円で止まります。
窓口でいったん全額を払った場合は、上限を超えた分があとで払い戻されます。
上限に入らない費用
月の上限で止まるのは、保険が使える医療の自己負担です。入院中の食事代(標準負担額)、希望した病室の差額ベッド代、保険外の費用は上限の計算に入らず、別に支払います。一覧と金額の考え方は窓口負担割合に含まれない費用、食事代は入院時の食事代(標準負担額)で確認できます。
手術によっては、白内障の多焦点レンズのように選定療養で特別の料金がかかるものもあります。白内障の場合は白内障の手術と後期高齢者医療をご覧ください。
窓口で上限までの支払いにする方法
厚生労働省の案内では、マイナ保険証を使うか、事前に限度額適用認定証を入手しておくと、入院でも外来でも、窓口で月の上限を超える分を払わずに済みます。認定証の申請先は限度額適用・標準負担額減額認定証の申請先の比較、払い戻しの申請は高額療養費の申請先の比較をご覧ください。
よくある質問
人工関節の手術で入院すると、1か月の自己負担はいくらで止まりますか。
所得の区分で決まります。令和8年8月から令和9年7月までは、窓口負担が1割・2割の一般の方で外来+入院(世帯ごと)が61,500円です。3割の現役並み所得の方は、区分ごとの計算式で上限が決まります。手術の費用そのものは病院や術式で変わります。
ペースメーカーの手術でも高額療養費は使えますか。
保険診療で受ける手術・入院なら、他の入院と同じように、自己負担が月の上限を超えた分が高額療養費の対象になります。
窓口負担が1割と2割で、月の上限は違いますか。
1割・2割の方は、所得の区分ごとの同じ表で上限が決まり、1割か2割かで入院を含む月の上限は変わりません。
差額ベッド代や食事代も上限に入りますか。
入りません。保険の対象とならない差額ベッド代などは高額療養費の対象外で、入院時の食事代は標準負担額として別に支払います。
一般的な制度の説明であり、個別の手術の費用や自己負担額を示すものではありません。確認日は令和8年10月14日です。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」、厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(一次資料・出典一覧参照)。